r_u_x_n_a’s diary

議論、趣味、その他

自由を求める(2)

 

唐突ですが、みなさんは自分自身が自由であると思いますか?

 

それは生活の中で経済的な自由や時間的な自由だけを意味しているわけではありません。

 

私たちは当たり前だと思っていることに縛られていると思いませんか。

 

例えば、私は生まれたときから日本人であり、日本という場所に暮らし、両親がいて、女として生き、平凡な家庭で、仏教と神道を(一応)信仰しています。

 

それらはすべて自分の意志によって選択できたことなのでしょうか。

 

自由という言葉は曖昧なもので、私は自由と不自由を感じながら生きています。

 

価値観や感じ方は人それぞれで、正解が見えてはきませんが、いつか自分が納得できるとような答えをみなさんと議論していけたらと思います。

 

 

さて、前回のおさらいです。

 

自由とは何かを私たちは議論してきました。

 

社会的身分からの解放や内的視点から自由とは何かをデカルトやカントの考え方を参照しました。

 

フランス革命を代表とする市民革命やイギリスの産業革命以降においては、自由は市民社会、政治の基盤として求められるようになりました。

 

私たちはこれから「国家と自由」について議論していこうと思います。

 

先述したように、国家は当たり前に私たちの生活や生き方に関わってきます。

 

今回はリバタリアニズム自由至上主義)の最も厳格な立場の一つである国家廃止論者(アナルコキャピタリズム[Anarcho-capitalism]*1)の思想を紹介しようと思います。

*1…アナーキー(Anarchy)とは非(An-)支配(archy)を意味し、国家の支配を否定する点では同じ立場である。

 

 

※決してテロリズムではありませんので!

 

 

3)国家廃止論

 

リバタリアニズムの中でも、個人の自由を最大限尊重しようとするために国家が担う政府機能をすべて市場に任せようとする立場が国家廃止論(無政府資本主義)です。



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(無政府資本主義の旗)

 

ノージック(Robert Norzik;1938-2002)やフリードマンMilton Friedman;1926-2006)、ハイエク(Friedrich August von Hayek;1899-1992)などに代表される多くのリバタリアン最小国家論や古典的自由主義ー国家は国防、司法、治安(または最低限の福祉)の機能のみを政府によって供給するべきとするー立場となります。

 

 

ここで疑問が出てくるのではないでしょうか。

 

 

そもそも国防、司法、治安あるいは最低限の福祉を市場に任せることが可能かどうか。

 

 

結論から言えば制度としては成り立ちうるということです。それが機能するかどうかは別としてですが。

 

どういうことか一つ一つ見ていくと、

 

  • 国防は私営の傭兵が担う。
  • 司法はより公平な判断を下すというサービスを提供する会社が担う。
  • 治安は警備会社がその役割を拡大して担う。
  • 最低限の福祉は国家が担うよりもチャリティーなどの自発的行為によって補える。

 

 

一見、無理がある点もありそうですが…

 

ここで重要なのはできるという可能性です。

 

なぜ私たちは高い税金を支払ってまでそのサービスを国家に担ってもらう必要があるのか。

 

よりよいサービスを提供するという点においては市場に任せるのが合理的であるとは考えられないだろうか。

 

私たちの身近にもガス、電気、水道、郵便、銀行、鉄道、教育など公的サービスを含む事業において民営化が進んでおり、すでに公営のときよりも高いサービスを提供されていることを考えれば国家最小論や無政府資本主義の主張も納得がいく部分があるのではないでしょうか?

 

 

4)水道の民営化を考える

 

2018年12月6日に水道法の改正が可決され、今まで国家が担ってきた水道事業に民間が担う可能性が出てきました。

 

背景には水道管の老朽化と人口減少があります。

 

1960年から70年代の高度経済成長期にかけて多くの水道管が建設されてきたが、水道管の耐用年数は40年であるため、耐用年数を越えて水が供給されているという点があります。工事費用は水道管1kmあたり約1億円かかるとのことなので、その費用は莫大なものであることが分かります。特に地震などの災害が懸念されるため、老朽化による水道管の破裂事故が多発していることもあり、対応は急務であるといえるでしょう。

 

人口減少も重要な要因の1つです。水道事業の大部分は固定費用であるため、人口減少による水道料金の収入減少は、水道事業の維持を困難にしている要因であるといえます。水道事業の赤字は私たちの水道料金の値上げにつながります。

 

特に地方においてはこの問題は深刻であるといえます。

 

政府によれば水道事業の運営を民間に委ねるコンセッション方式を導入することで民間企業のコスト削減ノウハウや市場競争原理を用いたよりよいサービスの提供を行うことができるとしています。


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(コンセッション方式[FNNより抜粋])

 

 

この議論において重要となる点は何であるだろうか。

 

賛成派と反対派の意見をそれぞれ見ていこう。

 

(1)賛成派の意見
  • 民間企業のノウハウを取り入れることでコスト削減が期待できる。
  • 市場競争原理を働かせることで、安い料金で高いサービスを提供できる。
  • 人材を市場から調達することで、迅速に老朽化問題に対処できる。

 

 

(2)反対派の意見
  • 利益追求のために大幅な値上げが予想される。
  • 値上げ幅に上限を設ければサービスの質の低下が予想される。
  • 値上げによって低所得者層が水道サービスの供給を受けられない可能性がある。
  • 不採算事業に対して民間企業の参入は期待できない。
  • 水道事業は独占事業であるため市場競争原理は働かない。
  • 外国資本の流入による水道サービスの安全性維持が懸念される。

 

 

 

私たちはこれまでに自由や平等の概念について確認してきました。

 

 

それぞれの立場において、水道民営化が正しいか正しくないかを考えることができると思います。

 

 

この問題はすでに現実にあるため、私たちがどのように考え、どのように行動するべきかを現実の問題として教えてくれるでしょう。

 

 

機会があれば議論しましょう。

 

 

今回はここまでです。

最後まで読んでくれてありがとうございます(っ ॑꒳ ॑c)💕

 

それじゃ(∩´∀`∩)バィバィ

 

参考文献

◦小峯敦編、「福祉の経済思想家たち」、ナカニシヤ出版、2007年

マイケル・サンデル「これからの正義の話をしよう」、早川書房、2010年


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