r_u_x_n_a’s diary

議論、趣味、その他

人生100年時代 どう生きるか

人生100年時代

(1)長寿大国「日本」

 流行語に「人生100年時代」という言葉がノミネートされたのは2017年のことである。リンダ・グラットンとアンドリュー・スコット両教授の著作「ライフシフト―寿命100年時代の人生戦略[2016]」が話題の発端である。医療技術の進歩に伴い、日本の平均寿命は平成29年度において男性が81.09歳、女性が87.26歳である。しかし、健康な人間が平均寿命を見て、自分が81歳や87歳は平均して生きるのだと考えるのは誤りである。平均寿命は0歳時における平均余命を表したものにすぎないからである。そもそも、私たちがあと何年生きられるかは平均寿命ではなく、平均余命を見なければならない。仮に男性65歳の平均余命は19.57年である。すなわち65歳の人は平均してあと19.57年(=84.57歳)生きることになる。女性については65歳の平均余命は24.43年(=89.43歳)である。しかし、平均余命が仮に84歳や89歳であると分かって、その年齢まで生きると仮定して準備するのは不十分な対策である。あくまでも平均であり、実際に最も死亡者数が多いのは男性が87歳、女性が93歳である。また男性の10%は94歳まで生き、1.5%は100歳まで生きる。同様に女性の10%は98歳まで生き、6.8%は100歳まで生きる。

※上記数字についてはH29「簡易生命表」より。

 

(2)セカンドライフをどう生きるか?

 現役世代は就業により安定した収入があるため、働けるうちは資産が尽きることは想定する必要はない。勿論、働けなくなるリスクは考えなければならないが…。

 人生100年時代において問題になるのは老後の生活である。ゆとりのある老後生活に必要な老後資金の月額は35.4万円である。公的年金の収入は夫婦で厚生年金と国民年金をモデルにすると22.7万円であり、差額は12.7万円である。公的年金だけでは、毎月12.7万円(年額152万円)を預金から切り崩さなければならない。

 では、退職時にどのくらいの資産を貯蓄していなければならないのか。

 

例)夫65歳(厚生年金)、妻65歳(国民年金)の夫婦の場合

 ①夫の死亡時年齢は84歳(余命19年)

 ②妻の死亡時年齢は89歳(余命24年)

 ③妻単独の生活費は夫婦のときの6割と仮定

 ④夫の厚生年金16.3万円、妻の国民年金6.4万円、遺族厚生年金6.1万円

 

 上記の条件で考えると

 ①…(35.4-22.7)×12×19=2895.6万円

 ②…(35.4×0.6-12.5)×12×5=106.2万円

 ①+②=3001.8万円

 

 上記の計算だけでも3000万は生活費だけで必要となってくることが分かる。実際にはこの金額に加え、介護費用や葬儀費用、税金等が費用として計上しなければなりません。

 3000万円+αを退職時に準備できるのは難しいのではないでしょうか。現役世代といえども、貯蓄ができる状況ではないからです。

 例えば、人生の中でのライフステージを考えると、結婚、住宅、教育と様々な場面で出費が想定されます。結婚資金は平均333.7万円(挙式・披露宴・パーティ等)、住宅購入資金(土地含め)は平均3637万円、教育資金は全て国公立の場合は平均1129万円、全て私立の場合は平均2469万円(一人当たり)。また10年に1回新車を購入すると仮定すると2140万円の購入資金が必要になります。

 

 また考慮しなければならないのは、少子高齢化という点です。

 年金の受給年齢が60歳から65歳に段階的に引き上げられたのはつい最近の出来事であるのに加え、私たちの時代においては65歳よりも引き上げられる可能性は非常に高くなることが予想されます。

 

 物価上昇、増税についても考慮しなければならない点です。

 物価上昇目標は2.0%であり、今年の10月から消費税は10%に引き上げられます。これらは私たちの資産を相対的に目減りさせているのと同じことです。今年108円で買えたものは来年には112円になっています。

 収入は減り、支出は増えていることから、人生100年時代においてセカンドライフをどう生きるかが問われているのです。

 

(3)自助、資産運用

 すでに公的年金だけではゆとりあるセカンドライフを形成することは不可能です。なら現役世代はどのような対策をしなければならないか。その一つは資産運用である。

 資産運用は退職後に行うものと考えられがちであるが、現在においてはそうではない。例えば、積み立てを検討する場合は、財形預金の他に積立外貨、積立投資信託確定拠出年金iDeCo)や国民年金基金等様々である。基本的に現在において「投資」を検討する場合は、株式、債券(国債ソブリン債社債)、REIT不動産投資信託)、株式投資信託、外貨預金等多岐にわたる。

 国内の多くの金融機関の定期預金は現在年利0.01%であると思われるが、物価が2%上がるのに定期預金の運用では1.99%の赤字が確定してしまう。これでは適切な資産運用とは言えない。当然全ての資産を利回りの良い株式や新興国国債に投資することも適切な資産運用とは言えない。

 

 資産運用の方法をレクチャーしたいわけではないのでここでは割愛するが、大事な点は現状の年金制度に依存した老後生活形成は維持できないという点である。

 

 以上は「意見」ではなく「事実」であり、私たちの現実である。

 

 悲観的になる必要はないが、戦略的な人生設計は必要な時代になったと考えるべきではないだろうか。