人間、この非人間的なもの
お久しぶりです( 'ω' و(و"
今回は趣旨を変えて、今年の現代文の入試問題を考えよう!というテーマです。
Twitterでアンケートをさせていただいたところ、なだいなだの「人間、この非人間的なもの」が一番興味があるという状況でしたので、どんな内容で、どんな問題が問われたのかを確認していきましょう!(⊙⊙)
1.はじめに
今回の「人間、この非人間的なもの」ですが、出題した大学は2019年の一橋大学です。一橋大学といえば文系トップクラスの難関大学の1つであり、偏差値は67.5でした💦(河合塾)。
なだいなだ(1923-2013)は精神科医であり、1988年から1990年の間、明治学院大学で人間論の教授を務めていた方です。なだいなだはペンネームであり、スペイン語の「nada y nada」(何もなくて、何もない)に由来するようです🤔。
難易度については、前年比で分量が減り、問題もやや易化したようです。エッセイということもあり、読みやすい文章であったと思います。
まだ読んでいない人はpdfから解いてみてはいかがでしょうか👇🏻。
https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/jump.php?l=https://nyushi.sankei.com/honshi/19/ht1-31p.pdf
2.「人間=非人間的」という構図
題名が「人間、この非人間的なもの」ということで、「人間=非人間的」という一見矛盾したような構図となっています🤔。
「人間=人間的」という関係は誰もが認めるような関係であると思います。人間の行為は人間的なものであると考えるのは当然です。しかし、人間という存在は一定ではなく、常に変化する存在です。「人間」が変化することで「人間的」という言葉の定義(範囲)も拡張されていきます。一方で、「人間的」という範囲ははっきりとした輪郭を持っているように感じます。
例えば「りんご🍎は赤い」は誰でも思い浮かべることができる関係ですが、「りんご🍏は青い」という関係は違和感を感じます。しかし、現実には赤いりんご🍎の他にも青いりんご🍏や黄色いりんご🍊が存在します。つまり、「りんご」🍏という存在が赤の他に青や黄色と変化しているのに対して「りんご的」🍎は赤いままであり、変化に対応していません。これは「りんご」と「りんご的」が切り離されていることを表しています。
同様に「人間」についても「人間的」が人間の変化に対応していないため、「人間=非人間」という構図が成り立つことを言っています。
3. 人間とは何かと問うこと
著者はテレンチウスのアデルフォス(兄弟)という喜劇から人間とは何かを問い始めます。「ニヒル・フマニ・ア・メ・アリエヌム・プトー(人間的なことで、私の関心を惹かぬものは、何もない)」という言葉から人間的でないものは何もないという無限に関心を働き続けることの姿勢を感じたようです。人間は人間的という言葉に呪縛されてはならない。人間は未完であるために人間的という言葉も無制限に拡大していく。人間とは何かを問うことは人間の認識(範囲)を拡大することを意味している。
4.「人間、この非人間的なもの」の意味
人間とは何かを問うことは、私たちがそれまで「人間的」とされていたものを越えて、「非人間的」と呼ばれていたものを認識することである。人間が「非人間的」だと言うのは「人間的」という考えがあまりに狭く、制限されているためである。
しかし、問題は「非人間的」には単に人間的ではないという、人間的なものを消極的に否定することを含意している。それは人間をありのままに見つめることを困難にしていまうことである。
内容を確認したところで、問いを考えて行きたいと思います。
5. 問い(一)
問(一)は漢字の書き取りです。
- ショウドウによる…
- リンカクのはっきりした…
- ソウバが決まって…
- タイハイした生活…
- フチョウにすぎぬ言葉…
馴染みがある言葉ですが、いざ書いてみると難しい言葉が多いですね😖。難易度としては標準~やや難というところでしょうか。
【答】
(A)衝動
(B)輪郭(輪廓)
(C)相場
(D)退廃(頽廃)
(E)符丁(符牒)
6.問い(二)
(ア)「自分を人間であることから開放すること」とはどういうことか、説明しなさい(30字以内)。
この問題は内容説明・言い換えの問題となります。字数が30字がシビアなので難しいですが、内容自体は易しいです。
【解答例】
ポイントとしては「解放」⇔「呪縛」という関係を生かすことでしょうか。
著者はアデルフォスの喜劇を見たことで、
「人間を善悪の此岸に立たせる」人間観から「人間のやることに、人間的でないものは、悪を含めて何もない」とする人間観に転換しています。
このことを著者は「解放」と表現しています。
傍線部は「①自分を人間であることから/②解放する」と区切ることができます。
それぞれ前後の文から言い換えれば良いかと思います。
7.問い(三)
(イ)「人間とは何か、人間的とは何か、という問に、限定的な答を与えることは不可能です。私たちに可能なのは、限りなく問い続けることですし、それに答えることは、新しい問を準備するためでしかありません」とあるが、それはなぜか(30字以内)。
この問題は理由説明です。
理由説明の方針は大きく2つあります。
- 因果関係を説明する。
- 意味内容を説明する。
1つめの因果関係については、「原因→帰結」という構図です。つまり傍線部は「帰結」となっており、求められているのは「原因」です。
ex.「花が咲いたから(原因)」→「うれしい(帰結)」
Q.なぜうれしいのか?→「花が咲いたから」
2つ目は意味内容については「原因=帰結」という構図です。この場合は、傍線部と答えが同じ内容でなければなりません。
ex.「記憶力がいい(原因)」=「頭がいい(帰結)」
Q.なぜ頭がいいのか?→「記憶力がいいから」
【解答例】
この問題のポイントは字数制限が30字と厳しいため簡潔に説明することが求められているという点と因果関係を捉えるということです。設問の難易度としては標準でしょうか。
著者は「人間は、人間的という言葉の外縁を無限に拡げている」としています。
変化する人間→人間的という言葉の意味の無限性を問う設問になっています。
長くなってしまったので一旦ここで終わります。
次回もまたよろしくお願いします( 'ω' و(و"